「……もう、校舎裏には来ないって言いました。それだけです」


「は…?」



私の言葉に、安西先輩は困惑した表情を浮かべる。



「なんでいきなり……どうしたんや?ケンカでもしたんか?」


「………」



俯く私を、安西先輩が心配したように覗きこむ。


私はただ、口をキュッと結ぶだけ。



だって何を言えばいいのかわからない。



夏輝先輩があの後どうなったかも知らない。

私が相談をやめると言ったことに、どう思ってるか知らない。

今の状態がケンカかどうかすら分からない。

今、先輩がどうしてるかも知らない。



(結局私は、何にも知らないんだ……)