「千佳か…?」



名前を呼ばれて、反射的に落としていた目線を上げる。




涙でぼやける視界に入ったのは茶髪の男の人。



「直樹…さん…?」




なんでいるの?



マスカラが涙で落ちてきっと変な顔してるはず。



顔見られたくない!





「おい!どうした!?千佳!大丈夫か!?」



慌てて駆け寄る直樹さんの姿を見たらもっと涙が溢れてきて、不覚にも声をあげて泣いてしまった…。





「うぅっ…。…ひっ…く……。

優介が…あの子と行っちゃったよぉー!」




目の前が急に暗くなる。



泣きじゃくる私を包み込むあったかい腕。



直樹さんの腕の中でボロボロ落ちる涙。



私を守るようにぎゅっと抱きしめてくれるのは………




彼のお兄さん……