桜坂もすっかりとピンク色を無くし
青い葉が繁り始めた頃。

裕介の突然の呼び出しを受けて
健は目を伏せた




あれから
裕介とは
登下校しなくなった


裕介は
ボディーガードすると豪語して
彼女の傍から離れることをしなかった

といっても限界はある
出来る限りの範囲が
登下校の間だった

校内では
携帯電話を片時も離さず
常にやり取りをしていたようだ
口を開けば
にゃんこが
にゃんこが
と緩んだ顔で報告してくる裕介に
より一層適当な相槌を返していた健は

腹をくくっていたこの日が
ついにきたことを
受け止めた


悟っていた筈なのに


動揺してしまう自身が情けなくて
悔しくて


幸せそうな親友の言葉が
まるで
鋭利な刃物のように
胸を切り裂き

見たこともない嬉しそうな笑顔に
喉が張り裂けそうな

そんな感覚に陥っていた








"俺!寧々と付き合うことになったんだ!"








何時かはくると
覚悟していた

その言葉


どれだけの覚悟をもってしても



足りる事なんてなかったんだ






「…よ、かったじやん


…オメデトウ」



「ありがと!
健!
健には悪いことしちゃったよな、

ごめんな!」

「…??」


「付き合い悪くなってさ、

でも、俺らは

ずーっと変わらず
親友だよな!!!」





裕介の目映い笑顔
太陽だと称したその
明るい笑顔が眩しくて



健は



俯いて



当たり前だろ

と笑ってみせた