「ありがとう…ございました」


小さく

華奢な身体を震わせ
大きな瞳を震わせている
子猫の様な彼女は

目尻に溜まった涙を堪えながら

ぺこりと頭を二人に下げた




男子の注目を集める

即ち
それは
女子からの反感を買う
という事である


よくある
嫉妬からの苛め

それを何の罪もない彼女は受ける羽目となってしまったのだ

上級生に囲まれていた所に
裕介は割り込んだ

彼女を心配し、
大丈夫かと問う裕介に対して
寧々子は

慣れていますから

と弱々しく答えた


毎日知らぬ人間から嫌がらせを受け
クラスでは疎外されてしまっている
美少女は

せっかくの可愛らしい顔を俯けてしまっていた



「…可愛いっつうのも大変なんだな。」


「健!」



「…迷惑かけて
ごめんなさい…。」


「迷惑なんかじゃないよ!」


「…。」


裕介は
細くて壊れそうな肩を
ぎゅっ!と握った


「俺!
君のボディーガードするよ!」

「…?」

「俺が守ってあげる!」


「…。」


「でも…。」


「だって寧々子ちゃんは何も悪くないじゃん!

俺が何とかする!」


「…うん、」

ほ、


彼女は
可愛らしい顔を
より一層可愛くして微笑み
目尻を赤く染めて
頷いた


どぎまぎするボディーガードのジャージの裾を
遠慮がちに掴み
安心した表情を見せている

そんな二人を
眺めていた健は

そっ、と
静かにその場から立ち去り


体育館には向かわず

自身が一番お気に入りにしている
ある場所へと足を向けた