裕介が言った

"可愛い子"
の正体を掴むのは
とても容易く

直ぐに判ることとなった


何故ならその
"可愛い子"

上級生の間でも注目を浴びるほどの
美少女だったのだ



"1年に
滅茶苦茶可愛い子が入った"



専らの噂で
そういった事柄に無頓着な健にですら
すぐに判ったのだ

といっても

噂以上に
隣から情報が
夥しく入ってくるのが
要因であったが。


彼女の名前は
寧々子(ねねこ)ちゃんと言うらしく
勝手に男子達が付けた

"にゃんこ"の愛称で親しまれ
学校中で今一番の注目株だということらしい


「かっわいいよなぁにゃんこちゃん!」

「そーだな」


「なに食ったらあんなに可愛いくなんだろ??」


「知るか」


「喋ったりできねーかなぁ!」


「普通に喋りかけりゃいいんじゃねぇの?」



「そりゃ駄目だぞ健〜!

にゃんこちゃんは
毎日毎日
全校生徒から
話かけられて
おどおどして困ってんだからな!

可哀想じゃん!」

「…じゃーやめとけば。」

「あのな〜!
もっと真面目に考えろよな〜」


「…。」


二人は
次の授業である体育の準備をし

体育館までの渡り廊下を通りすがっていく
一目惚れした彼女への
コミュニケーションをどう計ろうと
悩みながら
前をいく裕介の背中から
目を背けた健は

校舎裏の門に

複数の生徒の影を
発見した



「…?」


「って
おい
健?」


「…なぁ、あれ

そのにゃんこじゃねぇ?」

「え?」








健の視線の先を追う裕介の目に
飛び込んできたのは …



複数の女子生徒達に囲まれて
校舎に背をつけている
思い人の姿だった

思わず駆け出す裕介の
真剣な横顔を
ぼんやりと眺めた健は

ため息をついて
仕方無く 後に付いていった