広緑に凭れ
登校してくる生徒達を見下ろしている裕介

その隣で
壁に背を付けて空を仰いでいる健は

さっきから
裕介の話を
適当な相槌で返していた

真新しい制服に
身を包み、
初々しい様子で登校してくる新入生を
眺めているらしいが


新入生になど全く興味が湧かない健には
どうでもいい話だった


「あ、あの子新入生代表の挨拶やってた子だ」


「ふーん」


「俺達も
初めて高校にきたとき
あんな感じだったのかなー?」

「さぁな」


「あっ、
あいつ、制服超でけぇ!
可愛いなー」


「しかたねーじゃん」




例え健の返しが素っ気ないものだったとしても
裕介はめげたりはしない
変わらぬ調子で
話をし続ける

これが二人の通常運転である

健は
とてもクールな少年だった

感情を出さない

というより
何に対しても興味が薄い男の子だった

それに引き換え

裕介は

好奇心旺盛で明るく

人見知りなどしない
元気な少年だった

二人を何かに例えるならば
太陽と月

白と黒


そんな感じだった



「健は相変わらずだよね〜
あっ、あの子可愛い」

「…そうか?」



健は
肩越しに視線だけを向けて
裕介の言う
"可愛い子"
の姿を探した


「ほら、あの子
ふわふわしてる子」

「どれだよ」


「長い髪のさ、
巻き巻きしてる
可愛い子だよ」


「…どれも同じじゃねーか…。」


ふん、

一息ついて、
健は探すことをやめた
裕介のいう
"可愛い子"
がどれだかよくわからなかった



だが



ちらりと横目に映った
親友の変化は
すぐわかった

ほんのり頬を赤く染めて
ほわりととろけた表情をして下を眺めている

その横顔は




「…。」




健は
目を細め
視線を落とすと
ゆっくりと、
息を深く吐き出した