唇が離れると、周は手を伸ばして俺の耳の後ろをそっと撫で上げる。


周にそうされると、くすぐったいのと気持ちいいのとで気持ちがほぐれていく。


この前の恐ろしいほどの恐怖は微塵も感じなかった。


周の香りをすぐ近くで感じて、緊張がゆっくりと溶けていく。


鉄格子の間から周の腕が伸びてきて、俺の背中に回された。


ぎゅっと抱きしめられて、背中を宥めるように撫でられる。


「ヒロ、何でもいい。昨日のことを思い出せないか?」


そう問われて俺は首を捻った。


「何でもって……変わったことも起きなかったし…」


「誰かと喋ったとか、どこかの店に行ったとか」


そう言われて、俺は「あっ!」と声を上げた。慌てて顔を上げると、


「刹那さん!そう言えば刹那さんに時間を聞かれて、そのあと刹那さん紅茶を零したんだ!ちょっとした騒ぎになったからお店の人が覚えてるかも!」


「それは本当か!」


「間違いないよ」


俺がしっかり頷くと、周は


「確認する。ヒロ、待ってろ!俺が必ず真犯人を見つけてやるからな!」と慌てて走っていった。


周―――……頼む…


それから――――ありがとう………




――――

――


周は俺のためにがんばってくれている。


俺も…自分なりに何か考えないと。


質素なベッドに座って俺は腕を組んだ。


俺の毛髪を手に入れられるのは…やっぱり三好だ。三好の家に泊まりに行ったときに幾らでも入手することは可能だ。


だけど―――…今回俺が逮捕されてあいつが犯人でないことが分かった。


あいつの血液型は―――




O型だから。