「ねぇ、」

「...」

「落としたよ。君のでしょ」

「...はい?」


そう言われ、振り返れば
私が持っている定期入れと酷似したものを持っている男の人。

カバンの中を覗いてみれば、
入っているはずの
それ
は、全く見当たらなくて。


「...ありがとうございます」


と、言いながら
受け取る外なかった。

「どういたしまして」

優しく微笑むその彼に。
不意に胸が高鳴ったのも事実で。



_あぁ、

   これを、一目惚れ、と言うのか。



と。
16になって
人生初の感覚を少し


楽しんだ。