―――――母さんと、同じことを・・・・・



それは、小学生の時学校で命について勉強した日のことだった。

幼いながらに、死ということを学び、その未知の世界に恐怖を感じて母親に「死にたくない」とすがった。


「何で、いつかは死ぬのに、俺は生きてるの?死にたくないよ・・・・」


そう言うと、母親は俺の頭を撫でて


「・・・・人は、いつ死ぬとか、どうして死ぬとかそんな事を考えるために生まれてきたんじゃないの。」


俺は、その言葉に顔を上げる。

母親は優しく微笑んで


「・・・死は、誰にでも平等。でも生きることは平等じゃない。人生は、人によって違う。だから、その人生の中でどんな風に生きるのか、どうやって生きるのか。それを考えるために人は生まれてくるのよ。」



――――――――目の前の、女を見つめた。

ふっと力を緩め、首から手を離す。


「ケホッ・・・・貴方は、ちゃんと此処で生きている。」


咳き込みながら、そいつは立ち上がり



ギュ・・・・


「・・・・な・・・・・」



「――――貴方を、必要としている人がいる。・・・・・・私が、貴方を必要としているから」



女は、うんと背伸びをして一回りも二回りも大きな俺の体を包むように抱き締めた。


「・・・・だから、生きて。」



「・・・・・・!」


願うように、祈るように
切実な色を含んだ声が耳に響く。


それを聞いた瞬間

全身から力が抜けていくように感じた。


心が、安堵しているようだった。




そうか


俺は、誰かに必要とされたかったんだ。

唯一俺を必要としてくれた母親が俺のせいで死んで

罪滅ぼしと銘打ち、もう居なくなった母親にすがったんだ。