信じられない!何あのおちゃらけた奴!

物腰の柔らかい希彩と正反対!


「・・・・・・そう言えば。」



希彩は、弟の事を余り話したがらなかった。

電話で聞いた時は結構歯切れが悪かったし・・・・・

剣道の大会があるって言った時も、他の高校を気にしてたもんね。



もしかして希彩は、私と夢咲くんを会わせたくなかった・・・・・・?


でも、だとしたら何で?



「・・・・・・。」


手の中の眼鏡に視線を落とす。


希彩には、まだ秘密があるかも・・・・・・・?




ぐるぐると考え始めたとき


ドンッ!



「えっ、・・・!?」



背中に強い衝撃が走り、ぐるりと視界が反転する。


な、な、何、何々!!?


頭がミックスされたように真っ白になる。

状況が飲み込めず、体を強張らせた。


すると、肩を強い力で掴まれる。

ビクッと思わず目を閉じると



「怪我は!!あいつに、何された!?」


まるで聞いたことのない怒号が耳に響き、奥でキーンとなった。


恐る恐る目を開けて、見上げると



「・・・・・・・・・・き、希彩?」


随分焦燥感を露にした、希彩がいた。

息は切れ切れで、淡い茶色の瞳は焦りと不安で揺れている。


「な、な、どうしたの・・・・?」

そう言うと、少し落ち着いたのか周りを見渡し



「・・・・・あいつに、会ったんでしょう。」


と、いつもより低く潜めた声で囁く。


ちょ、な、に・・・・!?



「・・・・・夢咲くんの事?」


ぴく


「・・・・・やっぱり・・・・・!」



その瞬間、私の肩を掴んでいた手が僅かに揺れ動き、希彩は圧し殺した声を吐き出すように言った。


「・・・・・あの、希彩・・・・・。い、痛いし、離して。」


希彩のただならぬ雰囲気に気圧されて、おずおずと遠慮がちに言うと


「・・・・・え?」


茶色の瞳を戸惑い気味に瞬かせる。


「・・・・や、だから、あの、手・・・・。」


私の視線を追うように、希彩は私の肩に食い込んでいる自分の手を見て



「――――!!!!!すすす、す、すみません、もも、申し訳ありません――!!!」


光の速さで離すと、私の足元に土下座をした。