「・・・・・・弟・・・・?」

この人が、希彩の言っていた、弟・・・・


「それにしてもよく分かったねぇ。俺と兄貴をちゃんと見分けられた奴なんて一人もいなかったのに。」


夢咲くんはのんびりした口調で、私を見ながら言った。


確かに、外見の全てが希彩と凄く似ている。

同じといっても過言ではないくらい。


「折角兄貴の眼鏡も持ってきたのに、貴女の前では眼鏡をかけたこと無かったんだね。ま、それでも騙せる手筈だったんだけど。」


そう言って、夢咲くんは手の中の眼鏡を撫でる。

そしてまたカチャ、と眼鏡をつけて、緩く微笑んだ。

「母親にさえ見分けがつかない俺達を、何で分かったのかな?」


母親

そう言った瞬間、微かに夢咲くんの目が鋭くなった気がした。


って言うか、母親でも見分けがつかない・・・・って。

ちらりと探るような視線から顔を逸らし


「・・・・・・知らない。」

と、冷たく言い放つ。


「そっか~。じゃ、またリベンジさせてもらうね。バイバイ、凱那さん。」



ヒラヒラと手を振って、人懐っこい笑みで駆け出した。

だがすぐに「あ、そうだ!」と言って振り返ると、眼鏡を外し



「これ、兄貴に返しといて!」


「へっ、ちょ・・・・!」


笑いながら眼鏡を投げた。
慌ててそれを落とさないように両手で受け取り、大きく息を吐き出す。


仮にも人様の眼鏡ををあんな軽く投げるなんて、現代っ子が・・・・!!!

私も現代っ子だけど!
信じられない!


「アハハ、ナイスキャ―ッチ。またね~。」


憤りを感じて思いっきり睨むと、夢咲くんは楽しげに笑って手を振りながら走っていった。



「二度と会うか―――!!!」