「面あり!」
―――――あ~あ。
負けちゃった・・・・・・。
唇を噛み締め、頭を下げる。
せめて試合場を出るまでは堂々としていよう。
悔しいなあ・・・・・・
面を外し、籠手も纏める。
気まずそうな表情の李音が、近寄ってきたので、ぐ、と拳を握った。
何でもない、何でもない。気にするな、私。
絶対に、人前で負けて泣くなんて駄目。
「・・・・あの、凱那先輩・・・・。」
「・・・・・・・っ。」
心底残念そうに、労るような声が頭上から降ってきた。
それに眉が寄せられるのを感じる。
駄目、耐えろ。
「とき・・・「惜しかったね、凱那。よく頑張ったよ。」
その時、李音の声を遮るように由紀ちゃんのハッキリとした明るい声が聞こえてきた。
その声に顔を上げると、由紀ちゃんは残念そうに眉を下げながら微笑み
「ほら、早く防具片付けてきなよ。ね?」
そう言って、会場の扉を指で指し示す。
その全てを理解した上での優しさが、余りにも涙腺を刺激したので
「・・・・・・っごめ・・・・」
つんと痛くなる鼻を隠すように、下を向いて足はやに出ていった。