―――・・・・・希彩だ。


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仕事が終わりました。
そちらはまだ試合中でしょうか?


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仕事・・・・・・


さっきまで仕事してたんだ。

カチカチと指を動かし、文字を打つ。


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お疲れさま。
私も今、帰りの電車の中。

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携帯を閉じて、椅子に背を預ける。


「・・・・・彼氏?」


少しウトウトしてきた所だったのに、隣からの言葉にバチっと目が覚めた。

飛び起きて、隣に座っている由紀ちゃんを見る。


「っえ・・・・?」

な、な、なんで・・・・?


由紀ちゃんはにこりと笑って、自分の頬を指で軽く押さえると


「メール見てるときの凱那、笑顔だったから。」


と、言った。


「・・・・・笑顔・・・・?私が?」

まさか、という気持ちを含めて目を瞬かせると、由紀ちゃんは益々笑って


「うん。乙女の顔だった。」

そう言って、可愛らしく首をかしげた。


―――――私が、乙女?

・・・・・・・・・まさか、被害者の間違いだよ。

そう言いたかったけど、胸の何かが熱くなって、言葉にできなかった。



~~♪~♪


「・・・・あ・・・・」


隣からくる、微笑ましく見ているであろう由紀ちゃんの視線を受けながら、携帯を開く。


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そうですか。
では、駅まで迎えに行きますね。


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え・・・・・・


一瞬動きが止まってしまう。


そして


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友達と帰るから、いい。


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慌てて再開させると、なんとも無愛想極まりない文になったが、返信ボタンを押した。