後ろから強く抱き締められ、首元に荒い息がかかる。
今の状況をようやく把握できた私は、下から熱が上がってくるように感じて、また頭の状況整理ができなくなってしまう。
この声って・・・・
「・・・き・・・・希彩?」
ぴく
寄り掛かるように包まれている腕が僅かに身じろぐ。
な、何、何?
慌てて腕から逃れようと暴れた。
「ちょ、何して・・・・!あの、私今・・・あ、汗臭いし!き、希彩、離れ・・・」
「・・・・・・凱那さん。」
「っえ?」
やけに神妙な希彩の声が耳にかかり、思わず動きを止める。
背後で、何かを躊躇しているような、声にならない声が聞こえた。
「・・・・希彩?どうしたの。」
「・・・・・・・・今日は、随分遅かったんですね。」
迷った挙げ句にぽつりと希彩が言葉を発した。
でも、本当に言いたかったことはこんな事じゃないだろうと直感的に分かる。
――――まあ、別に関係ないか。
昨日今日で会ったような、しかも私のストーカーに知ったように言われて少しムッと来た。
貴方には関係ないでしょ。
そう言いかけたけど、
「・・・・いつも通りだよ。」
一度口を結んでつっけんどんに言った。