~side・希彩~
―――凱那さんから、返信が一度も来ない。
剣道部に所属しているのは知っている。
だが、部活終了時刻から十分七秒も過ぎている今も、校門から出てこない。
何かあったのだろうか。
言い様のない不安が渦巻き、居ても立ってもいられなくなった僕は車から降りた。
携帯を取りだし、凱那さんのGPSを調べようとした瞬間
―――――そうだった。
確か昨日、凱那さんに言われて、GPSを外したんだ。・・・・盗聴器も隠しカメラも取ってしまった筈。
「くそ・・・・!」
彼女と自分を繋ぐものが
この小さな携帯だけ なんて
こんなものじゃ足りないくらい彼女が欲しい
誰にも、見せず触らせず与えさせず聞かせず感じさせず
自分が居なければ生きていけないくらい縛り付けたいのに
~~♪~♪
「――・・・・!!」
ぎり、と歯軋りをして、壁に拳を打ち付けたい衝動に呑まれそうになった時、聞き覚えのあるメロディが僅かに風から聞こえてきた。
一瞬で判った。
―――――彼女だ。
気付けば足が地を蹴っていて、音のする方へ走り出していた。