竜臣と言うのは緋美の彼氏。一年の後輩だ。


「・・・・でね、竜臣ったら照れちゃっても~可愛いの!やっぱり年下って良いよね。」


そして緋美は今その竜臣くんの事について熱弁中である。


「はあ・・・・年下ね~。」


「うち弟が二人いるからさ、最初はやっぱ年上の方が良いかなって思ったんだけど竜臣は別!可愛いし、かっこいいし、最近じゃ私の方が背小さくなってきてんの!」


「まあ、バスケ部なんでしょ?やっぱ男子はすぐ伸びるよ。」


そんな風に緋美の話に相づちを打っているとチャイムが鳴った。


「じゃ、席戻るね。」


「これから頑張りなよ、凱那~。」







――――――・・・・・



「起立、れー。」


その言葉を合図に、ガタガタと皆が帰り支度を始める。


「あれ?緋美、今日部活は?」


その中に、いつもは途中まで部活に一緒に行く筈の緋美も帰りの準備をしていた。


「バイトあるし休む~。凱那は部活行くの?」


「うん。もうすぐ秋季大会あるもん。」


「へ~。でも一人で帰るの危なくない?ほら・・・・例のストーカーがさ。」


不安そうに声を潜めて、緋美が私の隣に来る。

だけどその言葉に苦笑いしか返せない。


「あ・・・・だ、大丈夫だよ!」


恐らく大丈夫ではないけど、これ以上心配はかけられないから。



「じゃ、行ってくるね。バイト頑張って!」


そう言って、緋美の呼び止める声を背中に受けながら私は部活に向かった。