「ムリだ…。」


『ムリじゃないよ。』


「俺も彼女を笑顔にしてやりたい。メイクをして、可愛くなった自分の顔を見せてやりたい。けど、怖いんだよ…。」



ケンは感情を高ぶらせた。




分かってる…。



アリサちゃんとの出来事や記憶が重なって、思い出してしまうんだよね…。



だからこそ逃げないで過去と向き合って欲しいの…。




『じゃぁ、どうして今もメイクを続けてるの?アリサちゃんへの償い?』


「そんなんじゃない…。」


『貴方が、こんな悲しい気持ちで生きた“今日”は昨日、亡くなった人が生きたいと願った“明日”なんだよ…。』



ケンは無言のまま病院へと入っていった。