ケンは黙り込み、寂しそうな瞳で花に触れる彼女の手を見つめていた。




いつもなら“きっと叶う”って言ってあげるはずなのに…。



どうして黙っているの?



「風邪引くから中に戻ろう…。」


「もぅ少しだけ、ここに居る…。」


「そうか…。」



そぅ言うとケンはジャケットを脱ぎ、雨の雫を払ってから彼女へ優しく掛けた。




「風邪引かない内に戻って来るんだよ。」


「うん。シート掛けてくれてありがとう!」



ゆっくりと歩き出したケンは病院の入口で立ち止まり、中へ入るのを躊躇う様に振り返った。



花壇の方を見つめ、呆然と立ち尽す。



その瞳からは悲しみを感じ取れた。