コン…、コン…。




静かに病室のドアを開ける。



『失礼します…。まだ起きていますか?』



微かな声で背を向けている体に問い掛けた。



するとその背中はゆっくりと振り返る。




「あなたは…。さっきの…。」


『すみません…。もぅ少し話したくて戻って来ちゃいました。大丈夫ですか?』


「えぇ…。まだ眠れないから…。」


『聞きたいコトがあって…。』


「何?」


『さっき言っていた“思い出したくない日”って何ですか?』


「今日は、ある人の命日なの…。」



その言葉に背筋は凍り、頭の中で嫌な妄想だけが先走る。