「...で何の本探してるわけ?」
人生初・・・俺は“手芸本コーナー”にいる。
「うん、子供服を作ろうかなぁ~って思って。子供服って言うか、衣装なんだけどね。
もうすぐサクラの保育園でハロウィンパーティーがあるんだけど、その衣装を作ってあげようと思って...」
「へぇ...裁縫もできるんだ?」
「裁縫っていうか、ミシンで縫うだけだし。そんな大したものを作るわけじゃないんだけどね。
それで、この間、智也君のお店に行って衣装に付けれる飾りを探してたって訳。」
「なるほどね~」
「そのハロウィンパーティー、父兄も参加なの...あたしも仮装しなくちゃいけないっていうのが辛いわ...」
「今時の保育園はそんな事もするんだ?」
「うん。皆、御両親揃って来るから...
あたしが行かないとサクラが可哀想だしね。...ってあたしの事...洋太から聞いてるよね?」
・・・あたしの事・・・つまりは父子家庭って事だよな。
「ん...ちょこっとだけなら。」
「そっか。別に隠す必要もないからいいんだけどね?
ウチ母親が居ないの。父親も仕事でほとんど家に居なくて。
まぁ、だからあたしがサクラの姉で、両親...みたいな。」
「......」
由美ちゃんは、そんな話をしながらも切なそうな顔はせずに、ニッコリ微笑んだ。