…あの頃より、大きくなった手で。

少し骨ばった、男のひとの手で。

変わらない、体温で。



「……色葉が、好きだ」



あのときと同じ言葉を、彼は私に告げた。

大好きな、優しい優しい笑顔で。


「…中三になって色葉と話さなくなって、諦められると思ったんだけどね。…また会っちゃったら、もうダメだった」

眉を下げて、大和が笑う。

私の瞳からは、絶え間無く涙がこぼれていた。

でも、逸らさなかった。

大和の目からは、絶対に目をそらさなかった。

「…隠そうと、思ったのに。周りから見たら、ただ漏れだったのかな。噂なんか立てられて、ごめんね」

ふるふると、首を横に振る。

私だって、逃げてた。噂から、逃げてた。

…大和から、逃げてた。


彼は私の涙を袖で拭いながら、本当の気持ちを話してくれる。

「…中学の時、振られちゃったけど。ごめん、あのとき言えなかったこと、言わせて」

きっと私、今すごく酷い顔をしてる。

こんな状態で申し訳ないけど、私は一生懸命首を縦に振った。