「…なんか、ぼーっとしてるね」


苦笑いをしながらバケツに筆を突っ込んでいると、大和がじ、とこっちを見る。

少しどき、としながら、私はごまかすように笑った。

「…そんなことないよ。ごめんね、集中するね」

大和は、鋭いから。

私が再び塗り始めると、大和も紙に目を向ける。

沈黙が降りて、時計のチクタクという音が響く。



「…中学の時を思い出すね」

その言葉に、筆を動かす手を止める。

大和は、やっぱり紙に目を向けながら、笑っていた。