「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
松田さんがクレープを渡してくれるので、それを受け取ろうと手を伸ばした。
「――― ッッ!!」
しかし、ひょいっとそれを目の前から遠ざけた。
キリッと、強く松田さんをにらむ。
「意地悪ですか?」
「うーん、どうだろう? “意地悪”かと言われたら…… 意地悪、かな?」
そうやって、楽しそうに笑っちゃって。
あたしのさっきの気持ちなんて、1ミリもわかっていないんだろうな。
「紗雪ちゃんさ、さっき…… ヤキモチ、妬いた?」
「ヤ、ヤキモチって!!」
さっきのあの、売り子さんのことだ。
売り子さんたちはずっと松田さんと話していて、その売り子さんたちに松田さんは終始にこやかに笑顔なんか向けていた。
あたしなんて眼中に無い感じだった。
あたしはずっと会いたくても我慢していたのに…… 久しぶりに二人でゆっくり過ごせる日なのに。
「妬いたでしょ?」
そうやって、自身に満ち溢れたようないい方して…… でも、その言い方だって、かっこよく思えてしまうほど、あたしは松田さんが好きなんだ。