「松田さんは午前中はなにをやっていたんですか?」


「俺? 久しぶりにゆっくりできた日だから、掃除したりしたよ」


そうだ。

松田さんは久しぶりの休みだったんだ。

なのにわざわざ文化祭まできて貰って……。


「疲れているとこすいません」


「謝らないで。 紗雪ちゃんとこうやって学校内を歩けて俺、嬉しいから」


“学生に戻った気分だ―――”と言って、たこ焼きを口に松田さんが含んだ。


そうだ。

あたしだって、松田さんとこうやって校内を歩けて嬉しかったんだ。

いつも恋人同士の人たちが校内を仲良く歩いているとこを見て“いいなー、羨ましい”って思っていたんだ。

“あたしも松田さんと歩きたい”と思っていた夢が今――― 叶っている。


「クレープいかがですかー?」


クレープを売りに、数人の女の子たちが近付いてきた。

でも……。


「お兄さん、いかがですかー?」


どうして、松田さんにしか話しかけないんだろう?

あたしだっているのに……。