ま、松田さん!


「俺、紗雪ちゃんにしか“かわいい”なんて言ってないから」


「……」


「好きな子がいるのに他の人にかわいいなんて言ってない」


松田さんがあたしの肩に顔を埋めているから、耳に髪が当たってくすぐったい。

そして耳元で松田さんが喋るので、なおくすぐったい―――。


「紗雪ちゃん」


「…… はい」


「好きだよ」


「あたしも、好きです」


そっと、松田さんの腕に自分の手を乗せる。


この穏やかに流れる時間が、好き。

沈黙なんて気にならない。

気にならないけど……。


「まっ、松田さん!!」


「んー?」


「くすぐったい」


さっきから、この人はー!!

人の耳に唇を寄せてくる。

唇を当てたりしてきて、くすぐったい。


あたしは身を堅くしてジッと耐えるしかない。


「好きだよ」


そう言ったと思ったら―――。


チュッと松田さんの唇が耳に降ってきた。