「……………す、す好きなのか?」

「ん?なにが?」

俺の質問に松宮がぽかんとした顔で首を傾げる。

「だ、だから、あのパッとしない眼鏡のどこが好きなのか聞いてんだよ!」

イライラしながらそう問うと、松宮は困ったような顔で口を開いた。

「うーん、それはちょっと答えにくい質問だねー」

「はあ!?だって婚約してんだろ?」

訳が分からなくて眉を寄せる。

松宮は少し考えてから、ゆっくり落ち着いた口調で話始めた。

「この婚約は宗家が決めたことなんだ。
宗家は僕を婿養子に望んでる。
身に余る、お話しだけどね」

「なんだよそれ、じゃあお前、別に森口が好きなわけじゃないのかよ!?」

「好きか嫌いかで問われるなら好きだよ。
カンナちゃんは小さいころから知ってるし。
病気のことだって理解してる。
演者として尊敬もしてる。
時期が来たら子供を作ることも考える。
彼女とならより良い家庭を築いていけると思うよ」

「はあ!?」

松宮の理路整然とした答えが無性に気持ち悪くてたまらない。

「俺が聞きたいのはそんな答えじゃないんだよ!!」

ばんっと机をたたいて立ち上がる。

「誰もかれもババアの言いなりかよ!?
お前らに自分の意思はないのか?
より良い家庭だあ!?
なんだそれっ
お前、今何歳だ?
年齢詐称してんじゃねーのか?
ジジムさいにもほどがあんだよっ」