一歩、森口が足を踏み出す。

周りから遮断された狭い空間では

それだけで、すぐに距離が縮まった。

「な、なんだよ」

いつにない森口の積極的な行動に動揺して、一歩後ろへさがる。

トンっと背中に本棚があたった。

さらに森口の足が前に出る。

俺は虫みたいに背中を本棚に張り付つかせて、森口を見下ろした。

ドキドキとうるさく鼓動が高鳴る。

森口の細い腕がそっと伸びて、肩に触れた。

バサッと乾いた音を立てて手に持っていた本が床に落ちていく。

「………」

一気に体温が上昇する。

恐ろしいほどに心拍数がはね上がって息が上手く出来ない。


森口は俺の首に腕を絡めていた。

ぴったりと身体が密着する。


鎖骨の下辺りに森口の小さな頭。

その少し下に、結構残念な森口の胸の感触。


………多分、Aだ。