〜♂said〜


女の家からの帰り道。

キスマークを付けられうざったい俺は、今機嫌が悪い。
あんな女二度と抱かねぇ…と心に言いながら、駅前のマンションに向かう。



ー夕暮れ時の、太陽が橙色に街を染めるー


俺はこのとき、人生最大の欲望に駆られることになるなんて思いもしちゃいなかった…。

あんな女、世界中探したってアイツしかいねぇと思うくらい俺を虜にさせたんだからー…



「おねーさん、若そうだけどいくつ?俺らよりは歳上だよな、こんなに大人っぽいし」
「暇なら遊ぼうぜ!俺たちに付き合ってよ!」
駅前の噴水の場所で、2人の男にナンパされてる女がいる。
囲まれた女は俺には死角で見えないが、なんもしゃべらねぇ女。
震えたりしてんのか、どうせ。




近くに腰を降ろして、たまには見物してから助けてやって金でも貰おうと思った俺は、男達の行動と……一瞬見えた、携帯にしか興味をもたず、まるでいない存在と思わせるような態度を取り続ける女達の様子を伺って居た。

「なあ、とっとといこうぜ!」
「カラオケでもいいよな?」
無理矢理腕をつかみ立たせる男達。
女は155cmはあるであろう小さな身体を立たせ、ようやく携帯から目線を動かした。
「…」
「いつまで無口でいんの?」

長い髪でこっからは表情が見えない。
スラッとした体型に、茶髪のストレートロングヘア。
服は黒のロンTにスキニーデニムのパンツ。
まさに俺からしたら"歳上のケバい女"って感じ。


「行こうぜもう!」
痺れを切らした男が女の子腕を掴んだ、そのとき…
「気安く触んないで。アンタ等が私を見て20歳前半くらいだろうとおもって話しかけてきたんだろうけどね、私はあんた等となん等変わらない高校生よ。」


俺はこのとき、オンナの顔を見て
『手に入れたい』
そう思ってしまったー…。


そんな、人生初めての一目惚れ?をしてしまったのは…

駿河 蓮斗(するが れんと)。


俺は、やっと前に進み始めたー


〜♀said〜


駅前の噴水広場。

家に帰りたくなかったあたしは、携帯でいつもの奴にメールを送っていた。
すると、チラチラこっちを見ていた男2人があたしに話しかけて来た。
正直普通にうざい…だから無視を決行したあたし。
相手もなかなかしつこい。
しかもあたしの年齢をすっごく上に見てきた!

腹立つ〜!!
高校生でしょ、あんた達。
あたしも高校生!!

無理矢理立たされて、あたしはワナワナと震える腕で、拳を握り締め
「気安く触んないで。アンタ等が私を見て20歳前半くらいだろうとおもって話しかけてきたんだろうけどね、私はあんた等となん等変わらない高校生よ。」


そう、言ってしまったー…。

スルーするつもりだったのに!
あたしを見て、口をポカーンと開けたままのナンパ男。


「はぁ…。それに、あたしあんたたちにかまってる暇ないから」

そう告げて、さっきのメール相手を探す。
あたしは迎えに来いって言ったから。

あたし、先週引っ越してきたばかりでこの街がわからないことだらけ。

「理乃!」
それはあたしの名前。
「馬鹿!遅いからっ」
口を尖らせたあたしの前に止まったのは、大きな厳ついバイクに跨った男。
「おい、お前等散れ」
あたしを未だガン見していたオトコ達は、その低い脅すような声ににげていった。

あたしの名前は、小鳩 理乃(こばと りの)。


あたしの人生は、ここから大きく動き出してしまったー


朝、電車で学校へ向かう。
黒いブレザーに、黒地に赤などのラインが入ったスカート。
ボタンは1つだけ開けて、緩めにリボンを付けてある。
新しい制服は、まだ慣れない。

「ねぇねぇ、今日桜丘学園行ってみない?」
ん?…桜丘って、あたしがこれから行く学校だよね?
「行く行く!運が良ければ彼に話し掛けてもらえるかも!」
「イケメン5人が揃ってるところみたいなー」

どうやら桜丘学園には、イケメン5人組がいるらしい。