私は今、事務仕事をしている。 前の会社で一緒に勤めてた人の紹介で就職出来たのだ。 「篠田さん、これお願いします」 「はい」 十年以上住んでたアパートを出て、一人女性用のマンションを借りた。 あのアパートを出るのは気が引けたけど。彼を……蓮くんを振り切るには、それしか無かった。 ―――今も思い出す。 彼に触れられた場所から、熱が生まれる。 『……優子さん…』 ――やめて。 『…優子……』 私を呼ぶ彼の掠れた声が……離れない。 .