とても悲しい気分のまま、駅に向かう。


切符の自販機で切符を買い、改札を抜けてプラットホームに降りる。


上り線が来るのを待っていると、携帯が着信を告げた。


流れることを止めない、人混みの雑踏の中、電話に出る。


「もしもし?」

『あの、藤原さんの…』

「……違います。」


どうやら間違い電話だったらしい。相手はひたすらに謝りながら、電話を切った。


そうこうしているうちに、上り線の電車がプラットホームに滑り込んできた。


運良くまだ満員になっていない車両に乗り込み、席に着くことが出来た。


隣には、耳にイヤホンをした少女が座っていた。


まっすぐと前を見据えた瞳は、この世のすべてを見ているかのようだった。


私も前を向いてみる。前には中年のサラリーマン。少しカツラがずれているが、気にせずに窓の外に目をやる。


高速で流れ行く街並みに、心まで流されていきそうだった。