『ぁゆみねぇちゃん……。』


私の後ろで秀人くんが怯えてる。

子供の前でそんなに怒鳴らなくたって――…

反論一つ、しようとすると、


――『まぁまぁ、そんなにキレなくても良いんじゃないですか?葛西センセ。』

『浅井先生!』


棒キャンディを口に含んだ浅井先生がやってきた。

放射線科きってのエース。

頭の固い先生たちとは異なり、かなり緩い先生。

浅井先生の評判も肯定派と反対派、5分5分ってところだ。


『ですがね、浅井先生。いくらなんでもこんなに遅れてこられるとこっちも…』

「仕方ないじゃないですか。そこにいる水川看護師は今日は休み。患者の希望で急遽、出勤してもらったんですから。それに、ここでこんな無駄口叩いてる方が、時間のロスだと思いますが。葛西センセ?』

『……ッ……さっさとやりたまえっ!』

『へーへー。……チッ、さっさとやるっつの。』


顔を真っ赤にさせて奥へと消えた葛西先生を尻目に、舌打ちをする浅井先生。

口が達者な方だとは伺ってたけど…あそこまでとは…

と、呆気にとられていると、


『さっさとやるぞー。坊主、こっち来い。』


浅井先生はもうCTの準備を済ませていた。


「…秀人くん、先生が呼んでるよ。」


中々動かない秀人くんに、声をかける。


『あゆみねぇちゃん…ぼくやっぱりこわいよ……。』


見ると、秀人くんは目をウルウルさせて今にも泣きそうだった。