足は浩貴の足を思いっきり蹴り、浩貴は顔をしかめる。


「いてっ!」

 パっと離れた手から逃れるようにする。


 あぁ、お会計お会計。

 カウンターでお会計を済ますと、急いでお店を出て行った。


 少し走ったところで、足を止める。


 はぁはぁ、という息遣いがよく聞こえる。



 冬だけど、少し暑い。


 
 あ・・・マフラー忘れた。

 きっとカフェだ。


 あのマフラーお気に入りだから取りに行きたいけど、浩貴と顔合わせたくない。



 蹴っちゃった・・・。


 蹴るつもりはなかったのに。


 でも、謝れるような気分でもなかった。



 というか、追いかけてこなかったことに少し寂しさを感じた。


 追いかけられたら逃げるのに、追いかけてこなかったら寂しいなんて、おかしいよね。


 
 呼吸の調子が少しおちついてくると、首元の寒さが気になった。


 でもやっぱり、取りにはかえれなかった。




 単純に、浩貴と顔をあわせたくなかっただけじゃない。


 浩貴と副会長が一緒にいるとこ、見たくないからだろうね。



 そんな、つまらない嫉妬だ。