顔を上げると、そこには、かなり怒った感じの渉くんがいた。


「い、五十嵐くん……」


私を呼び出した渉くんの取り巻きの人達は、渉くんに気付き、固まっている。


「渉くん……、どうして?」

「胡桃、大丈夫か?怪我はないか?ごめんな、来るのが遅くなって」


私は渉くんの顔を見て、ホッとして泣きそうになる。


だけど、泣きそうになるのを我慢して、顔を横に振った。


渉くんは私の腕を引っ張る。


そして、私はそのまま、渉くんの腕の中に……


えっ?

抱きしめられている?


「コイツに、手ぇ出してみろ。ただじゃおかねぇからな」


すると、取り巻きのリーダーの人が


「……っ!!なんで、その子だけ?何で、その子だけ構うの?どうして私はダメなの?その子なんかより私の方が可愛いのに!」


声を荒らげる。