ゆるゆると頭を持ち上げた悠斗は、まだ泣きそうな顔をしていた。

 縋るような濡れた漆黒の瞳で、俺と照を交互に見て来る。


 もうこれ以上、俺たちがお前に言ってやれることなんて何もない。

 後は――
 まぁお前の好きにしろ。


 今まで通り、自由に、気の向くままに。




 ありのままに、正直に。




「帰るぞ」

 立ち上がって右手を差し伸べてやれば、ペシリとそれを叩き落として、ノソノソと悠斗も自分で立ち上がった。

 小さな抵抗は、意志が固まったことの現れだと思いたい。