一番奥の個室。
勢いよくスライドさせた鍵がガシャンと大きな音を立てた。
「……はぁっ、……はぁっ、」
ひとりになれば息苦しさから解放されるかと思ったのに、うまく息ができない。
苦しい。
痛い。
熱い。
「……っ、……はぁ…っ、」
握りつぶされたみたいに痛い。
知らなくてもいいことを知ってしまった。
ショックと。
どこか怒りにも似た感情が涙を生む。
「……っ、……ぅ、」
これじゃあ、まるで華乃だ。
失恋して。
トイレで泣いている華乃みたいだ。
こぼれ落ちる涙を拭うたび、眼鏡のフレームが上下に小さく動く。
煩わしい、とでも言うのか。
黒くふちどられた世界。
先生を中心に広がった世界を、切り取るためのフレームが。
今は邪魔な存在でしかない。