「誤魔化さなくていいよー」

クラスメイトの大きな声につられるように、周りにひとり、ふたりと集まる。

その中に華乃の姿もあった。

どこか得意げな様子のクラスメイトの両肩に手を置いて、今にもぴょんぴょんと跳びはねそうだ。


先生は口元を教科書で隠したまま。


「ママも一緒だったの。一緒に見ちゃったの」

ふふふ、とこぼした息もそのままに、クラスメイトは続ける。

「女の人といたよね?」

と。


心臓が飛び出るんじゃないかと思った。

えっ、と声を上げそうになるのを堪えて息を吸い込んでしまったから、

「……ひっ、」

と。結局は、悲鳴にも似た音を出してしまった。

これ以上、変な音を出すわけにはいかない。

咄嗟に両手で口を覆った。


「あー…、」

上がりも下りもしない。

先生のそれは、肯定とも否定ともとれなかった。

ただの、発声練習みたいに。