なにかのきっかけがあれば、どっちつかずの感情も、はっきりとしたものになる。
きっと。
きっとそうだ。
そんなことを思っていたところだったから、正直、驚いた。
きっかけは、すぐに訪れたから。
「先生。昨日、K駅近くのスーパーに居たよね?」
授業を終えて教室を出ようとした先生を捕まえて、クラスメイトがそう訊ねた。
その場面を目にしたわたしは、トイレに行くふりをして、慌てて後ろの出入口から廊下に出る。
聞き逃してなるものか、と。
パタパタと小さな音を立てて先生たちに近づいた。
どうやらその子は、授業中もそのことで頭がいっぱいだったみたい。
「絶対にそうだと思って。ずっと訊きたくて」
そう言いながら体を小さく揺らす。
その動きにつられて制服のスカートの裾もユラユラ揺れる。
先生は手にしていた教科書で口元を隠すと、
「スーパー?」
と、首を傾げた。