前にも後ろにも。右にも、左にも。
簡単には動けない毎日。
同じところにとどまることに慣れてはいけないと思うのだけど。
そんな、単純なものじゃない。
「あと少し。頑張りなさい」
先生の指が、わたしの手元の空欄をとんとんと叩いた。
「………」
ドクンと跳ねた心臓。
お決まりのように息が苦しくなる。
そうやって。
そうやって、かき乱すから。
いや。先生は、かき乱すとか。
そんなこと、少しも思っていなくて。
わたしが勝手にそう思ってるだけ。
手の中で消しゴムを転がしてる男子生徒や、さっきからずっと髪を触ってる女子生徒にも、
「あと少しだろ。頑張れ」
同じように声をかける。
みんなと同じ。
その他大勢の中の、ひとり。
もし、机に突っ伏して泣いたりでもしたら。
先生は、どんな言葉をかけてくれるのだろう。