今日も一日無事(?)に終わり帰ろうと用意をしていたら隣の山口先生のクラスの子が歩み寄ってきた。

「あなた安達さん…だよね?
 山口先生が今すぐ数学室に来いって言ってたよ!」

げ?今日から早速ですか?
しかも今日は部活が休みでゆっくりしようと思っていたのに。

「あ、ありがと」

素っ気なく返事をし、渋々数学室に行く事にした。



皆は楽しそうに帰ったり、部活をしたりしているのに。
あたしだけ放課後に勉強っておかしくない??



ムスーっとしながら歩いていく。
これがあたしの毎日の日課になった。

先生は毎日、頭の悪いあたしの勉強を見てくれる。
数学じゃない教科さえも見てくれるようになった。


担任でもない先生が、何であたしを?


いろいろ引っかかることばっかりだったけどあたしは先生の一生懸命さに引っ張られ、休日以外の日は毎日勉強して帰るようになった。




サボった日もあったんだ。

サボった次の日は先生は寂しそうな顔をしていた。
その顔を今も忘れてなんかいない。

あんな元気な先生があんな顔するんだって。
あんな顔の先生見たくないって思っちゃったんだ。

だから嘘をつかずに「サボりました」と正直に打ち明けたら

「本当の事言ってくれてありがとうな。
 でもお前が俺を裏切ったのは少し残念だったな」って。


その瞬間、あたしはなんてことをしたんだって思った。

誰も信用していないあたしを先生は信用してくれていた。
だけどあたしがそれを断ち切ってしまったんだ。


その日を境にあたしは変わった。

あたしも先生を、先生だけを信じていこうって。