「……届かないんですよ」


横を見ると、彼は寝そべったまま、
手を空へと伸ばしていた。

そしてその手を握って、開く。


「そりゃ、ね」

真似して伸ばす。


掴める物は空気だけだ。



例え届いたとしても、
彼は一体何を掴みたいと言うのだろうか。


空にも、何も在りはしないのに。