――早く起きなさい、遅刻するわよ!

お母さんの声が聞こえる。

待ってよ、まだ眠いんだもん。

でも遅刻はしたくないな。遅刻は……。





はっと目が覚めて、私はがばっと起き上がった。

なぜかちゃんと布団を被ってたのか、まったく覚えてない。

というか、ここは一体どこなの?

寝かされてた部屋に見覚えはないし、そもそも私って、学校にいたんじゃなかっただろうか。

そうだ、音楽室に行く途中だったんだ。

ていうかここ、明らかに学校じゃないし!

「お目覚めになったようですね」

女の人の声が聞こえて、私はぎくっとしてそっちを振り向いた。

ふすまを開けて入ってきたのは、着物を着た女の人と、侍のような服の男の人。

――何なの、その時代劇のような格好は。

近くに来て座った男の人に睨まれるように見られて、私は思わず身を引いた。

そうしたら今度は男の人は、突然その頭を深く深く下げてお辞儀をする。

「えっ、ちょっと……」

慌てた私の声に被せるように、その人が言った一言は。

「お久しぶりでございます、姫様」