「・・・。お主だろう?幕府が追っている、美しい男というのは」

以蔵が口を開く。

噂は、早い。

もう、ここまで知れ渡っているのか。

「僕は・・・江戸で罪を犯しました。許されない罪を、何度も。それ故に、追われる身となってしまった。自業、自得です」

僕は、罪のなき人を何人も殺めてきた。

佐助さんの意に反する。

佐助さんの敵になる。

佐助さんの邪魔をする。

みんなみんな殺してきた。

何を思うかなど、人それぞれの、自由なのに。

佐助さんのことになると、僕は何も考えられない。

まして、佐助さんを侮辱する奴は・・・・・・。

僕が初めて人を殺したのは、あの日だ。


「へっ、何が、江戸の鬼だ」

酔っ払いが、歩いている。

僕は、5歳だった。

佐助さんと出会って、間もないころだった。

「どうせ、力任せに剣を振っているんだろう」

僕は、許せなかった。

佐助さんの悪口を言った、この親父を。

だから僕は・・・。

「うわあああああああ!!!!!」

襲った。

手は赤く染まり、べたべたとしている。

殺してしまった。

「あ、ああ・・・!!!」

言葉が出なかった。


それからだろうか。

僕が、人を殺し続けたのは。