彩の家が険悪な事を佑介は付き合ってから知った。


いつだって学校で元気に笑っている彩からは、辛い事なんて想像もできず・・・初めて無理を言って送ってきた時は驚いた。



彩は家に来られるのを極端に嫌っていた為・・・自分を親に会わせたくないのかと思っていたのだが・・・これでは自分じゃなくても来てほしくないだろうと思った。



初めて来た時も・・・今と同じように家の外まで喧嘩の声が漏れていた。


そして彩は今と同じように・・・・諦めたように笑っていたのだ。



「あーちゃん。川に行こうよ」


そう誘えば、彩の顔にも嬉しそうな色が浮かぶ。



「行きたいです!!!」


小走りで行こうとする彩の手を掴み、佑介は自分のコートをかけてやる。



「佑先輩が・・・風邪ひいちゃいますよ?」


彩は自分が風邪をひいていたことも忘れ・・・佑介にコートを返すが、受け取ってもらえなかった。


結局彩の体にはかなり大きい佑介のコートを羽織る。



コートには佑介の温もりがまだ残っていた。