好きな人が夜自分に会いに来て、迷惑と言う者はそうそういないだろう。


例にもれず彩もそうだった。


「迷惑じゃないですよ!ただスッピンだったから・・・」


言ってくれれば化粧したのに・・・と呟く彩を佑介は優しく笑う。


「あーちゃんはスッピンでも可愛いよ?」


いつだって佑介は彩を可愛いと言ってくれた。それが彩はとても嬉しかった。


「もう・・・!すぐに下行くんで・・・待ってて下さい」


急がずおいでと優しく囁くと電話は切れた。彩は携帯と鍵だけ持つと、大好きな佑介の元へと急いだ。


「急がずおいでって言ったのに」


走ってきた彩を佑介はいつも通り抱きしめる。

彩にとって佑介は初めてできた彼氏で、抱きしめられる事に最初は戸惑ったが、今ではここが一番落ち着く。


「だって・・・早く会いたかったんだもん・・・」


口を尖らせ拗ねれば佑介が折れるという事を彩は今までの時間でよく知っていた。


そして彩が思っていた通り、今日も佑介が折れる。


「分かったよ。俺もあーちゃんに会いたかったから・・・走って来てくれて嬉しい」


抱きしめる力が強くなる。香水の匂いが彩を包み込んでいた。