早川にほとんど傷はなかった。
「手加減すんなって言ったじゃん」
早川は笑った。
俺は無意識のうちに顔だけは殴らないでいた。
「女は顔が命だろ」
俺がそういうと早川は笑った。
「名前は?」
「尾崎 リュウ」
早川の質問に俺はバンドエイドを早川に貼りながら答えた。
「リュウ、そっか」
早川はなんでだか最初見たときとは違った。
「優しいね、リュウは」
「あ?」
優しいとか言われなれてねぇ俺は照れを隠すためにわざと威嚇した。
「ケンカってすごいよね。
一度なぐり合えばそのあとはどんな奴だって仲良く
なれる」
早川は笑った。
よく笑うやつだ。
最初に会ったときはやけに強がっている女だと思ったが
今はなんだか別だ。
「そうだな」
俺の返事に早川はバンドエイドを取りながら
「ケンカで負けたのリュウが2人目」
と言って、俺の口元にバンドエイドを貼った。