「そうなんですか?」


わざわざ私の顔を見に??


なんか……


不思議な感じ。


「今日、迎えに行くから!」


そう言って先輩は行っちゃった。


「なんだったんだろう…」


「うわー…やっちゃったよ」


隣では、和奈がこの世の終わりみたいな顔をして。


「あれじゃあ、先輩が可愛そうだわ」


1人、ブツブツとつぶやいていた。



「優波、ほんとに恋愛初心者すぎっ!!」


「いや…実際初心者です……」


仕方ないじゃん…


男子なんて全然分かんないし、


付き合ったこともなければ、


好きになったことすらないもん。


「これから私が指導するわっ!!」


和奈は私の手を握って、真剣な目をした。


和奈の迫力に負け…


「お願いします…」


和奈の恋愛テクニック?を教わることに…



「分かった!?」


「はい…」


あの後、授業はサボり。


みっちり1時間、和奈の話に耳を傾けた。


「じゃあ、放課後は楽しんで♪」


スキップで教室に戻る和奈と、


重い足を引きずって行く私。


私、あんな事できるのかな……


和奈に言われた通りにいくかな…


改めて、恋愛の大変さに気づかされた。


「頑張ってね!優波♪」


そう言うと、和奈は先に帰ってしまった。



「優波」


教室で待ってると、先輩が来た。


鞄を持って、先輩の元に駆け寄る。


和奈に言われたように…


「あ!零先輩!!…待ちくたびれましたよー」


「え…あ、ごめん!」


とまどいながらも、先輩は


「じゃ、行こっか」


と、笑顔で言った。


「先輩…手、繋いでもいいですか??」


恥ずかしいよー…!!



和奈に言われた通りに話す。


「ダメ…??」


これ、ぜったい私のキャラじゃない…


先輩はスッとポケットから手を出した。


「ダメなわけないじゃん」


そう言って私の手をとった。


男の人の手が、こんなに大きくて


こんなに温かいなんて知らなかった。


ドキドキと大きく心臓がリズムを刻む。


こんなに緊張するなんて……


思わなかった。



「喉乾かない??」


張り詰めた空気を先輩が元に戻した。


近くにあった自動販売機にお金を入れてる。


「何飲みたい??」


「えっと…紅茶で」


「了解!」


先輩は紅茶を私に手渡した。


一瞬だけ手が触れる事にドキドキする。


手をつなぐよりも…。


「ありがとうございます!」


和奈に言われた。


笑顔は絶やさない事!って。



飲み物を飲みながら、再び歩き出した。


「先輩、コーヒー飲むんですか?」


「飲むよ!…なんで??」


「大人だなーって」


気がつけば、和奈に言われてない事も


普通に話せてる自分がいた。


「先輩!…ここでいいですよ」


「家の前まで行くって」


「大丈夫です!…ありがとうございます!」


「ほんと??…じゃあ、また明日」


「今日は楽しかったです!!」



和奈…


私、出来ない!!


ここまではなんとか言う通りに出来たけど…


「はい!また…明日!」


自分からキスなんて…


それは恋愛初心者の私には……


「優波…」


出来ないよ。


「えっ……?」


「優波を楽しませたお礼な!」


耳元でそっと呟かれた。


今までに聞いたことのない先輩の声で。



「あ、の…!?」


「じゃ、こんどこそまた明日」


先輩は手を振って私の前からいなくなった。


私の体温を上昇させて。


「なんか…ズルい……」


私が恋愛初心者じゃなかったら…


こんなにドキドキしないものなのかな?


火照った顔を覚ましながら和奈に電話をかけた。


ボタンを押す手には、先輩のぬくもりが残ってて


小刻みに震えるこの手で、


ボタンを押すのは難しかった。