私に、生まれて初めて彼氏ができた。
好きな人が今までいなかった私が
1つ上の先輩に告白された。
先輩……
井上 零(イノウエ レイ)は、サッカー部キャプテン。
長身な上に綺麗な茶色の髪。
この学校で知らない人はいないくらい、
超がつくほどの有名人。
なのに…
なんで私??
「神崎 優波!」
「はいっ!!」
先生の声で現実に戻された私。
神崎 優波(カンザキ ユウハ)
ごく普通に高校生活を送る1年女子。
のはずが………
先輩に告白されてからというもの…
そんなわけにもいかなくなりました。
“零の彼女どこ?”
“あの子だって”
“あぁ…”
先輩たちの目線、1人占めです…
でも!
私にできた初めての彼氏。
絶対にくよくよしないって決めた!
身の程知らずだけど…
それでもがんばる。
「神崎ー、読書だ!ど・く・しょ!!」
「すいませんっ!」
昨日の出来事でいっぱいな私。
急いで本を広げ、とりあえず読書に没頭した。
「てか、優波さぁ、先輩の事好きなわけ?」
親友の桐山 和奈(キリヤマ カズナ)が首をかしげる。
「んー…普通?」
「うわっ!!最低ね」
「なんで!?」
和奈の“最低”発言に驚いた私。
「先輩をもてあそんでるわけ?」
和奈いわく、私は彼氏って存在をなめてるらしい。
「これから好きになるよ、多分」
「悪魔ね、悪魔」
確かに、好きで付き合ってるわけじゃない…
だけど、そんなこと言ってたら…
一生彼氏できなさそう。
「お、いたいた!優波!!」
遠くから近づいてくるその声の主は、
顔を見なくても分かった。
「零先輩!!」
私の元に来た人は、まぎれもなく先輩だった。
「どうしたんですか?」
お昼休みに……
何か用があったのかな??
「単純に顔が見たかった!」
………??
「そうなんですか?」
わざわざ私の顔を見に??
なんか……
不思議な感じ。
「今日、迎えに行くから!」
そう言って先輩は行っちゃった。
「なんだったんだろう…」
「うわー…やっちゃったよ」
隣では、和奈がこの世の終わりみたいな顔をして。
「あれじゃあ、先輩が可愛そうだわ」
1人、ブツブツとつぶやいていた。