忍を連れてくAXELに戻って来ると、店内は更に人が増えて居た。



潤はすぐに右京に気付き、軽く頭を下げていたが“いいから仕事を続けろ”と目で合図する。



「あ!居た居たぁ!」



忍は虎太郎の姿を見つけて踏み出し掛けた足を止めた。



「どした?」



「…ねぇ、右京。虎太郎君は何しにこっちに来たの?」



「さぁ…リサに追い出されたらしいけど?」



「原因はアレ?」



そう言われてカウンターに目を向けると、知らない女と楽しそうにグラスを傾ける虎太郎。



「…かもしれないな…」



さすがの右京も半ば呆れてしまう。



「おい…虎太郎。」



「ん~?あっおかえ…って…ちょっ!?」



─バキッ…!!



振り返った虎太郎にすかさず一発見舞ったのは右京じゃなく、忍だった。



…それも鮮やかな右フック…



「しっ…忍さん!?いきなり何すんの!?」



「“何すんの”ですって…?今から鉄槌を食らわすのよ!!」



「わわわわ!!待って!!もう食らってる!既に食らってるから!!」



両手を挙げて降参する虎太郎を見て右京が慌てて忍を止めた。