「さすが右京。目敏いね。」



突然そう言われて右京は振り返った。



社の屋根の上に人影が見えたが、後ろから照らす月のせいで顔が良く見えない。



「俺が来た時には既にその傷はあちこちにあったよ。」



社の上でそう言いながら一つ羽ばたいた…彼の“翼”を…。



そして驚く右京に微笑むとフワリと地上に舞い降りた。



その姿は正に“天狗”のようだ。



だが天狗ではない。



その証拠に彼の翼は純白だった。



「…なんで…」



呟くように言葉を発する右京に彼はゆっくりと近付き、風を纏いながらその翼を静かに仕舞った。



「…なんでここに居る…“虎太郎”…!!」



「まぁ…イロイロあってね…」



虎太郎は右京の前に立つと彼の銀髪に手を通し、紅い右目を見据えポツリと呟いた。



「…“おかえり”…」