夕方になり忍の退社時間まで暇になると、右京は思い立ってフラリと家を後にした。



日本に帰国する度に時間を見つけては通う場所…。



…高校時代は毎朝この道を走ってたっけ…。



そんな事を思い出して少し可笑しくなり独りクスクスと笑った。



丁度母校の裏手にある小高くなった場所にそれはあった。



─“天狗の森”



右京が覚醒した場所であり、独りになりたい時いつも訪れるお気に入りの場所だ。



そこには今も変わらず小さな古びた神社があった。



心地よい風に導かれ境内へと足を踏み入れ、木々のざわめきに耳を澄ます。



何一つ変わらない景色だと思っていたが、異変に気付き眉を寄せた。



例えば鳥居の柱部分だったり、御神木の太い幹だったりに無数の傷があったのだ。



それらはまだ新しく最近出来た傷である事が判り、右京の脳裏にある疑惑が過った。